日本円に連動するステーブルコイン「JPYC」は、近年注目を集めている仮想通貨の一つです。前回の記事(JPYCとは?初心者向け徹底解説)ではJPYCの基本的な特徴や使い方を紹介しました。本記事ではさらに一歩踏み込み、なぜ1JPYC=1円の価値が維持できるのか、その仕組み、ビットコインやイーサリアムとの違い、そしてリスクや法律的な側面について徹底的に解説していきます。
JPYCが「日本円と連動する」仕組みとは?
「1JPYC=1円」という価値がどのように守られているのか疑問を持つ方は多いでしょう。これは主に以下のような仕組みによって実現されています。
① 前払式支払手段としての仕組み
JPYCは株式会社JPYCが発行する「前払式支払手段」として位置付けられています。ユーザーが日本円を振り込み、その金額に応じてJPYCが発行されます。この時、発行されたJPYCの裏付けとして、同額の日本円がJPYC社の管理下に保有される仕組みになっています。つまり「日本円を先に受け取ってから発行する」ため、基本的に価値の担保が存在するのです。
② ブロックチェーンによる透明性
JPYCはイーサリアムやPolygonといった複数のブロックチェーン上で発行されており、発行枚数や流通量を誰でも確認できます。透明性の高い仕組みにより「発行量に裏付けがあるかどうか」をユーザー自身が検証可能です。この点は従来型の電子マネーや銀行口座とは異なる利点です。
③ 価格の安定をもたらす用途設計
JPYCは基本的に「投機対象」ではなく「決済や送金」を前提に設計されています。市場で自由に価格が変動するビットコインなどとは異なり、「1円で購入・発行される」という点で価格の安定が保たれているのです。
JPYCとBTC/ETHの違い
次に、JPYCと代表的な仮想通貨であるビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)との違いを整理しましょう。
① 価格変動の有無
- JPYC:日本円と連動し、1JPYC≒1円で安定。
- BTC/ETH:需要と供給、市場の思惑により価格が大きく変動。
② 利用目的
- JPYC:日常決済や送金、NFTの購入など「通貨的利用」が中心。
- BTC:「デジタルゴールド」と呼ばれる価値保存手段、投資・投機が中心。
- ETH:スマートコントラクトや分散型アプリ(DApps)の基盤。
③ 技術的な位置付け
JPYCは独自のブロックチェーンを持たず、EthereumやPolygonなどの既存ネットワークを利用しています。一方、BTCやETHはそれぞれ独自のブロックチェーンを基盤として運営され、分散型ネットワーク全体を支える役割を果たしています。
JPYCに潜むリスク
JPYCは安定性が特徴ですが、リスクがゼロというわけではありません。主なリスクは以下の通りです。
① 発行元リスク
JPYCは株式会社JPYCが発行・管理しているため、発行元の経営状況や運営体制に依存します。もし運営に問題が発生すれば、ユーザー資産に影響が及ぶ可能性があります。
② 法規制リスク
暗号資産や電子マネーを巡る法律は世界的に整備の途上にあります。日本国内でも金融庁が監督を強化しており、将来的に規制が厳格化されれば利用方法が制限される可能性があります。
③ 技術リスク
ブロックチェーン自体の脆弱性やハッキングのリスク、またはユーザーがウォレット管理を誤ることによる資産喪失も懸念されます。
JPYCと法律
JPYCは「暗号資産」ではなく「前払式支払手段」として発行されています。これは法律上の位置付けとして大きな特徴です。
- 暗号資産:価値変動を伴い、金融商品取引法や資金決済法で規制される。
- 前払式支払手段:事前に日本円を預け入れて発行される、電子マネー的な扱い。
JPYCはこの後者に該当するため、既存の金融法制度に準拠しやすい点が利点です。特に資金決済法の下で登録・監督を受けることで、一定の信頼性と法的安定性が担保されています。
JPYCの未来と展望
JPYCはすでにNFT市場やオンライン決済で活用され始めています。さらに今後は、銀行や大手企業との連携によって利用範囲が拡大する可能性があります。特に「日本円と同等の価値を持ちながらブロックチェーン上で動く」という特性は、国際送金やWeb3サービスにおいて大きな強みとなります。
まとめ
JPYCは「安定性」と「利便性」を兼ね備えた日本円連動型ステーブルコインです。BTCやETHのように価格変動が大きな仮想通貨とは性質が異なり、日常的な決済や送金に適しています。ただし、発行元や法規制に依存するリスクがある点には注意が必要です。
基本的な仕組みや利用方法については、初心者向けの解説記事をご覧ください。
→ JPYCとは?初心者向け徹底解説

